「電気通信工事」と「電気工事」。どちらも名前に“電気”が入っていて、なんとなく同じような仕事に見えるかもしれません。しかし、実際には扱う設備も、作業内容も、必要とされる知識も大きく異なります。たとえば、スマートフォンやパソコンの通信環境を整えるのが電気通信工事であり、照明やコンセント、ブレーカーを扱うのが電気工事というように、それぞれの役割にははっきりとした分かれがあります。
この違いを正しく理解することは、就職や転職を考えるうえでも非常に大切です。「なんとなく興味がある」からもう一歩踏み込んで、「自分がどちらに向いているか」を知ることで、選ぶ仕事にも納得感が生まれます。
ここでは、それぞれの工事がどんな内容なのか、資格や働き方にどんな違いがあるのかを整理しながら、自分に合った方向を見つけるための手がかりを紹介していきます。
電気通信工事とは?通信を支えるインフラ整備の仕事
電気通信工事は、電話回線やインターネット、テレビ共聴設備、防犯カメラ、LAN配線など、「通信」に関わる機器や配線を整備する工事です。スマートフォンが当たり前になった今、この仕事は暮らしやビジネスに欠かせない存在になっています。建物の中だけでなく、街中の通信インフラも支えており、一般住宅からオフィスビル、工場、病院まで、活躍の場は幅広くあります。
具体的には、配線工事、通信機器の設置、信号の調整、機器の保守点検などが主な業務です。工事の際には、図面を読み取り、決められた配線ルートに沿ってケーブルを敷設し、機器を正しく接続します。作業には高度な注意力と正確さが求められますが、一度設備が整えば、多くの人の情報通信を支えるインフラとなるため、大きなやりがいを感じられる仕事でもあります。
また、電気通信工事には「工事担任者」と呼ばれる国家資格が関わっており、この資格があることで、高度な通信設備の施工や管理を行うことが可能になります。通信技術の進化とともに、常に新しい知識が求められる分野ですが、その分、技術者としての価値も高くなっている職種です。
電気工事とは?電気を“使える”ようにする基盤の整備
電気工事は、建物に電気を供給するための設備を整える仕事です。配電盤や分電盤の設置、照明器具やコンセントの取り付け、電線の配線作業などを行い、電気が安全かつ安定して使えるようにすることが役割です。いわば「電気の入り口をつくる仕事」とも言えるでしょう。
住宅やビルだけでなく、店舗、工場、公共施設など、あらゆる場所で電気工事は必要とされています。新築工事だけでなく、古い建物の電気設備の更新や、漏電・断線といったトラブル対応も重要な仕事のひとつです。人々の生活や仕事にとって電気は不可欠なものであり、その供給を支えるこの仕事もまた、社会にとってなくてはならない存在です。
電気工事を行うには「電気工事士」の資格が必要です。第2種・第1種と段階があり、扱える電圧や作業の範囲が異なります。資格取得には筆記と実技試験があり、定期的な更新や講習も義務づけられています。
扱うものが「電気」という性質上、安全への配慮が非常に重要です。感電や火災などを防ぐため、法律や基準に沿った作業が求められ、常に丁寧な施工と確認が欠かせません。
必要な資格や技術の違いを整理してみる
電気通信工事と電気工事では、実務の内容だけでなく、取得が求められる資格や技術も異なります。電気通信工事の代表的な資格が「工事担任者」です。これは電話回線やインターネットなどの通信設備を設計・施工・維持するために必要とされる国家資格で、AI種やDD種など複数の区分があり、扱える設備の種類によって取得範囲が分かれています。通信機器に関する知識と技術の習得が前提となっており、電子回路や信号処理など、比較的専門性の高い内容が含まれます。
一方、電気工事で必要とされるのが「電気工事士」資格です。第2種は一般住宅や小規模施設の電気工事に対応し、第1種はビルや工場など高圧の電気設備を扱う現場に対応します。こちらはケーブルの種類や接続方法、絶縁対策といった「電気を安全に扱う」ための技術が求められるのが特徴です。
また、実際の現場では資格の有無だけでなく、作業の正確さ・スピード・安全への意識など、現場で信頼されるスキルが大きな意味を持ちます。たとえば、資格を持っていても、現場での段取りや他の職人との連携ができなければ、仕事を任せられるまでには時間がかかることもあります。
つまり、どちらの仕事も「資格+実務力」が重要であり、それぞれの特性に合った知識と経験の積み重ねが求められる分野です。
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どちらを選ぶべき?将来性・安定性・働き方の視点から比較
電気通信工事と電気工事、どちらにも必要とされる仕事であることは変わりませんが、将来の働き方やキャリア形成の視点から見ると、それぞれ異なる特性があります。
まず将来性の面では、どちらも安定した需要がありますが、通信分野は今後ますます拡大する可能性があります。光回線、Wi-Fi設備、セキュリティ機器などの設置工事は、新築だけでなく既存建物の更新需要も多く、技術革新に伴って新しい案件が生まれ続けているからです。対して、電気工事は社会インフラとして常に必要とされる仕事であり、都市部だけでなく地方でも安定した需要があります。景気に左右されにくく、日々の暮らしに密接に関わるぶん、将来にわたって必要とされる職種だといえます。
働き方の違いとしては、電気通信工事は屋内作業の比率が高く、工期が比較的短いことも多いため、現場の移動が多くなる傾向があります。電気工事は現場によっては長期にわたることもあり、同じ建物にじっくり関わる場面が増えます。それぞれに良さがありますが、「変化を楽しみたい」「じっくり作り上げたい」など、自分の好みによって合う方が変わってくるはずです。
また、職場によっては両方の工事に対応していることもあります。現場で経験を積みながら、自分に合った方向性を見つけていくというのも、ひとつの選び方です。
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迷っている方へ:自分の得意や興味から考えてみる
名前が似ている電気通信工事と電気工事ですが、その中身にははっきりとした違いがあります。扱うもの、必要な資格、現場での作業内容、キャリアの進め方──どれも自分の性格や希望する働き方によって、向き不向きが見えてくるものです。
もし「どちらが自分に向いているのか分からない」と感じているなら、まずは自分が何に関心があるか、どんなことにやりがいを感じそうかを軸に考えてみるのが良いでしょう。配線やネットワークといった情報機器に関心があるなら電気通信工事、暮らしの中で身近な電気設備に携わりたいなら電気工事というように、興味の方向性から選ぶのも一つの方法です。
また、働く環境や人間関係も大切です。同じ仕事でも、どんな仲間と、どんな職場で取り組むかによって、続けやすさは大きく変わります。自分に合った場所を選ぶことが、長く働くためのいちばんの近道です。
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